Bacon x Lettuce

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あなたの知らないBLCDの世界

 どうも、BLCDエキスパートライターのウシヤマダと申します。突然ですが、あなたはBLCDを知っていますか?もしもあなたがBLCDを体験していないとしたら、それはもう口に出すのも恐ろしいくらい損をしていますよ。生まれてはじめてBLCDなるものを体験したとき、全身が震撼しました。これまで積み上げてきた地盤が一瞬で崩れ落ち、まるで景色の異なる別世界に塗り変わってしまったようでした。

 私がBLCDと出会ったのは、かれこれ11年前になる。高河ゆん原作のアニメ「LOVELESS」でボーイズラブ(以下BL)に開眼したばかりの頃、BLと聞けばなんでもカートに入れ、ろくに使っていない脳に見合わない大量の知識をオーバーワークで詰めこみまくっていたあの頃、インターネットで知ったBLCDの存在。その知識を拾うたび、まだ聞いてもいないBLCDを想像して、なにか確信的で運命的なものを予感していた。小さな子供が昆虫図鑑に没頭する純粋さと情熱をもって、今トレンドのBLCD、高評価のBLCDをmixiのコミュニティで何十時間も調べ上げる毎日。鈴村健一さん、鳥海浩輔さんの名前がやたら多かったように思う。とにかくなにか一枚購入したいけれど、どんな声優さんがいるか知らず、どれを買っていいのかわからなかったので、「LOVELESS」に出てくる声優さんが出演していて、評価の高いCDを買った。一人自宅で聞いたBLCDは、誰に配慮する必要もないのに、ずっと口元を押さえずにはいられなかった。決して人に見られてはならない危険な欲望が、体内で消化しきれず叫び出してしまいそうだったからだ。衝撃だった。

 こんな素晴らしいものがこの世に存在したなんて…

 私のこれまでの人生は一体なんだったんだ…

 そして通いつめた乙女ロード。その数ある中古ショップの一角。BLCDコーナーが縮小されているのを見たとき、このままBLCDが聞けなくなったら・・・と、一生白飯が食べられなくなるのと同等の絶望を感じたのです。そんなことがあってはならない。断じてならない。そこで、頼まれてもいないのにBLCDという無二のコンテンツを後世に伝えていくため、その使命を果たそうと立ち上げたのがこのブログというわけです。

 冒頭でBLCDを知っているか尋ねておいてなんなんですが、ここに来るということは既にBLCDの世界になにかしら突っ込んでいらっしゃる人が大半だと思います。が、今さら説明しちゃうぜ!BLCDとは…

BL:ボーイズラブ
CD:ドラマCD

 そう。かっこかわいいボーイとボーイたちがラブしちゃう夢がMORI MORIドラマを、小さなコンパクトディスクに詰め込んだわくわくワンダーランド。ラジオドラマ、オーディオドラマ、放送劇、なんて言われ方もありますが、BL界ではとりわけBLCDと呼ばれています。漫画や小説などの原作をもとに制作されることが多いですが、最近ではオリジナル作品も台頭してきていますね。まぁなんといっても音声のみで展開されるドラマなので、濃厚に次ぐ濃厚。声優さんたちの磨きぬかれた演技で泣いたり笑ったり、その息の一つ一つ、すぐそこに彼らがいるような、自分が彼らの空間に入ってしまったような、魅惑の世界へあなたを連れていきます。

 BLCDは「音声のみ」というところが肝です。音声のみでドラマの内容を伝えなければならないので、映像で情報を補完できるアニメでは入れないような、より細部の情報を演技で表現します。息を吸う、吐く、詰まる、震わす、間をとる、高く、低く、大げさになりすぎてもいけないし、でも聞いている人に伝わるようにしなければならない。そういった声優さんたちの細やかな演技が、ヘッドフォンを通してあなたの脳に直接響いてくるのです。しかもイケボで。しかもイケボで!大事なことなので二回言いました。

 BLCD最大の見せ場とはどこか。私は迷わずこう答えます。

 濡れ場に決まってるだろ!

 そうですご想像のとおりです。ボーイズがあられもない姿でやっさいもっさいするあれですそうです間違いありません。今、どこで誰になにをして、なにをされているか、全て声だけで表現するんですよ。もちろん粘膜音などSEを当てることはあっても、それはあくまで補助的に演出されるのであって、キス、舐める、咥える、といった描写は声優さんが手などを使って再現されます。この情報を聞いただけでもうすでに興奮を抑えきれませんけれども、映像があるよりずっと強烈な刺激があるといっていい。耳元でイケボのいやらしい声×いやらしい声がいやらしいことをしているわけですから、頭がボン!ボヤージュ!顔から火を噴くという言葉を実体験できます。※ボンボヤージュに意味はありません

 最大の見せ場と言いましたが、濡れ場のないBLCDももちろんありますし、濡れ場がないからといって魅力がないということは一切ありません。あたり前田のクラッカーだね!が、しかし、やはりBLCDといえば濡れ場であろうと声を大にして言えます。なぜなら、絶対に覗くことのできないパンドラの部屋を覗くことができるからです。現実という名の下界ではあり得ない、かっこいい、かわいいボーイズだちのあられもない情事を覗く。こんな魅惑的で背徳的なことはありません!

 そして濡れ場は、もっともセンシティブで難しいシーンだと思っています。濡れ場は様々な意味で山場です。今夜が山田。決して濡れ場エローい萌えるーとかいう軽いテンションで語れないことを言っておこう。この濡れ場の演技次第で作品全体の評価がひっくり返るくらい重要な局面なのです。濡れ場がどれだけ難しいかというと、例えば、受けの男の子の属性が声低め、堅物、がっちりとした体型、ノンケだったとしよう。そういういわゆるかわいい系でない体育会系のキャラクターが、シリアスな濡れ場になって突然AV女優並みの甲高い喘ぎ声でananしてたら、

おっふ

ってなりませんか?いや実際こんな的外れな演出はほぼ皆無ですけれど。確かに好みの問題といえばそうです。好きな人もいますね?私がそうですね?聞いてねぇですね。はい。しかし好みの問題については、作品の客観的な評価には繋がらないため、ここでは置いておきましょう。ではなぜ「おっふ」するかというと、作品やキャラクターの”色”と演出の不一致から起こる不協和音だと考えられます。作品内であえてそういうキャラクターを設定している場合などを除いて、このようなギャップはマイナスに働いてしまう危険が潜んでいます。正解はない。でも不正解はある。この濡れ場という戦場では、どんなにスキルの高い声優さんでも「好みじゃない」と一掃されることがある。それがBLCD。濡れ場が最大の見せ場であり、同時に最大の難所でもあるのです。まさに声優さんたちにとっては、

君は、生き延びることができるか

と問われているようですね。

 声の演技だけで感情を伝えなければならないということは、必然的に聴く方も丸腰の演技を目の当たりにすることになります。濡れ場があるから、というわけではないですが、濡れ場があることも含めて、結果的に声優さんたちの演技力はそれなりに高いものが求められます。そう考えると恐ろしいねぇ〜。演技一本勝負ってことですもんね。でもだから価値がある。私はそう思います。

 いかがでしたでしょうか。BLCDはBLというニッチなジャンルのさらに上をゆくニッチなジャンルです。それだけに声を大にして語られることが少ないのではないでしょうか。ベーコンレタスは、BLCDのエキスパートライターとしてガチでBLCDにぶつかっていきたいと思います。

次回、BLCDは凱旋門です。

お楽しみに!