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BLCDは凱旋門賞です

 よくBLCDは、新人男性声優(以下、新人声優)の登竜門と言われることがあります。しかし私はここに強く、異議を唱えたい。


 BLCDに出演されている声優さんたちは、アニメの主役をバンバンこなしている方もいれば、デビューして間もない方もいます。登竜門といわれるゆえんは、駆け出しの男性声優さんがBLCDに出演して、ある程度実績を重ねたら出演しなくなる傾向があるからだと考えられます。※1

 だがしかし!BLCDは新人声優さんがバージンを捧げるからといって、無条件に歓迎されるような甘いところでは断じてないと言い切ろう。

 

 登竜門、成功するための関門という意味ですが、関門という意味では合っていると思います。しかし、立身出世のための関門というのは違うのではないか。BLCDの場合は新人声優さんが名前を売るために出演し、名前が売れたら新作へ出演しなくなる(通称:卒業)傾向があるという意味合いで遣われますが、ここに違和感を覚えるんです。売れたら卒業という傾向は、BLCDファンに失礼があるんじゃないかと。アニメの新作には出るけどBLCDの新作はお断り、ということは、そこにBLに対するバイアスがあるからなのではないかと思うわけです。いや、他にもいろいろあると思いますよ。声優さんといえど芸能人ですからイメージ作りとか、あとはもしかしたらBLCDのギャラが仕事のわりに少ないのかもしれない。しかしそれを差し引いても卒業傾向が高い。その傾向こそ登竜門といわれる最大の理由でしょう。私たちはもっと、市民権を主張していい。

 

 アヌスはなめても濡れ場をなめるな

 そのBLCDに対するバイアスというのは、言わずもがな「男同士のセックス」であろう。BLCDではほとんどの作品に濡れ場があり、数分から長いものでは数十分の濡れ場があります。前回の記事でもご説明しましたが、この濡れ場には高い技術を要することを。BLCDのなかで描かれる物語は読んで字のごとく、リアルではない。けれどそれをどうフィクションのうえのリアルにみせられるか。どういう関係の人とどういう状況でセックスに至って、どういう感情でセックスしているか。今誰にどういう行為をしていて、どういう風に快感の頂点に達したか、そのときの息遣いはどんなものか。実に様々な状況を熟慮しながら、音だけで状況が伝わるよう演技構成を組み立てなければなりません。こんなに緻密で繊細でクリエイティブなことがあろうか。「男同士のセックスなんて」というが、その「男同士のセックス」のなかにどれだけ細やかな努力と技術力が費やされているか、ということなんですよ。BLCDを何百枚も聞いてきたウシヤマダは、この濡れ場というエベレストを攻略できる声優さんは、その技術力を高く評価されるべきだと思っています。 

 

 BLCDファンは井筒監督

 ファンの雰囲気って、例えばアイドルグループ一つとっても、グループによってカラーが異なりますよね。あそこは服装が派手だとか、そっちは大人しいとかいろいろ。BLCDのファンの場合は、全員が井筒監督だと思ってください。はい。井筒監督なんで、中途半場なもんもってきたらドチャクソ言われます。実際、アニメで活躍されていて歌も出しているイケイケ売れっ子声優さんが、BLCDではボロカスに言われることがあるんです。これ、本当にあった怖い話。売れてようがイケメンだろうが免罪にならない。イケメン声優出してセックスさせときゃホイホイ萌えるんだろ、とか思ってたら大間違GAY!ストーリーはもちろん、キャラクターとの相性、濡れ場の演技、SE、BGM、編集、フリートークまで、様々な点において厳しく評価されます。アニメで活躍されているからといって、BLCDでも活躍できるとは限らない。まさに渡るBLCDは井筒監督ばかり。

 

 BLCDは高級品

 BLCD、正直高いです。1枚3000円もする。1冊500円の漫画本だったら7冊も買えるし、1杯飲みにだって行けちゃいます。だけど買うんですよ。人生の貴重な時間を安月給に捧げて、すり減った心と体を癒すために買うわけですよ。それだけに、ファンもガチンコ勝負なわけです。ある種の博打。3000円に見合う満足感が得られるかどうかは、買って聞いてみないことにはわからない。そんなリスクを冒しても買う価値がある、それがBLCD。そこにある魅力、それはゲイビデオほど生々しくない、アニメのように映像との齟齬が少ない、漫画よりキャラクターが生きていると感じられる世界観、それがドラマCDの良さです。他にはない唯一無二のコンテンツなわけです。だから高級品でも買うんです。ファンは井筒監督のように厳しい、それでも投資し続けてくれるファンがいるからこそ成り立っています。

 

 お前が必要だ、逝かないでくれ

 そして切に思う。売れたからやめる、BLなんて色物、なんて言わずに真摯に向き合って続けていってほしい。悲しいんですよ単純に。卒業(BLCDの新規作品に出演しなくなること)されると、嗚呼、嫌々出てたのかな…とか、BLだからって軽んじてたのかな…散々弄んでおいて売れたらボロ雑巾みたいに扱うんですか、ああそうですか!ってさ…。悲しいし、寂しいですよやっぱり。
 BLと他の作品と分けること自体があまり好きではないのですが、声優さんたちにはBLとその他、ではなく多くの作品と同じように尊重する気持ちをもってほしいと思います。確かに濡れ場のあるストーリーが多いので、そこに抵抗をもつ方もいるのかもしれません。けれど前述でも書いたように、濡れ場は最も高い演技力が求められ、その演技力が試され、それをいかんなく発揮することのできる最高峰のスポット。あえて「出ない」と決めつけないで、演技の幅を広げるという意味でもバイアスから抜け出して、一皮剥けてみないか?(イケボで)

 

 語弊があってはいけないので説明しますが、卒業される声優さんばかりではありません。トム・クルーズの声優で有名な森川智之帝王や、プロフェッショナル両刀の平川大輔さん、最近ビジュアル革命の激しい前野智昭さんなど、卒業される方が少なくないなかで、少なくとも10年以上は新作のBLCDに出演し続けてくださっている声優さんたちです。忙しいなかでもBL作品に出演し続けてくださっている声優の皆様方には心の奥底、マグマの底からジャンピング土下座したい。ありがとうッッッ!!!!!!!!!!!!

 

 BLCDの良さというは、ドラマCDだからこそ表現する自由の幅が大きいことだと思うんです。舞台やアニメでやるとすると、表現の自由度が下がってしまう。映画の場合では年齢制限を設けると、一部のファンは見ることができないという問題が生じる。その点、ドラマCDであれば音声のみの演出なので、ぐんと表現の自由度が上がるわけです。制限を受けることなく、表現することができるのです。そういう可能性を秘めているのに、登竜門という慣習があることによってキャストが偏り、いつも同じようなキャスティングで作品の新鮮味がなくなる、といった問題が生じます。新人声優さんやBLCD出演OKとしている一部の声優さんだけではなく、新人からベテランまで幅広い層の声優さんに出演してもらうことは、キャストのマンネリ感を解消し、より作品のイメージにずれのないキャスティングを行うことができる。そして結果的に、購入の層が増える。これは今後のBLCDの発展に必要なことだと考えています。全員強制出演!とは言いませんが、バイアスを外して柔軟に対応してもらえたら秀樹感激だZ!

 

 以上のことから、BLCDは名前を売るために利用されるような登竜門ではない。高い演技力が求められ、卓越した技術をもつ、優れた声優さんだけが活躍することのできる場所、それがBLCD。さながら世界最高峰の競馬レースで知られる、凱旋門賞といえるでしょう。

 

 いかがでしたでしょうか。濡れ場でこんなに語れる人もそうそういないと思います。マジで三日三晩語れます。まだまだ語りつくせないことがたくさんあるので、濡れ場に関しては声優さんごとの特集でも組んでまた書きたいと思います。乞うご期待。

 

次回、BLCDの赤い彗星たちです

 

※1ちるちるさん記事参照