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慈英×臣カップル成就編!崎谷はるひ原作「さらさら。」レビュー

 慈英×臣シリーズ4作目である「さらさら。」(以下、本作)は、事実上2作目のストーリーという大変ややこしい、スターウォーズってどういう順番で見ればいいの?的な疑問にぶちあたります。しかし大丈夫です。スターウォーズほどややこしくありません。「しなやかな熱情」をおいしくいただいたあとに「さらさら。」をぶっ込めばいいだけ!ほら簡単!
 前回の記事でも触れたように、本作は我々が長野の風になるうえで非常に重要なステップになります。え?ちょっとなに言ってるかわからない?バカヤロウ!前回の記事を全力で読んでくださいお願いします!

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 作品名:さらさら。
 原 作:崎谷はるひ著
 レーベル:Atis collection
 メインキャスト:秀島慈英(CV.三木眞一郎)× 小山臣(CV.神谷浩史)
 設 定:画家 × 刑事
 ジャンル:サスペンス/ロマンス
 エロ度:★★★☆☆
 ラブシーン回数:2回
 ラブシーン分数:5分51秒(1回戦,1:11/2回戦,4:40)※トラック9(13:57~)キスのみ
 あらすじ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 画家の秀島慈英は、傷心旅行で出会った刑事の小山臣を追いかけて、長野へ移り住むことに。しかし引っ越してきてもなお、自分の気持ちを伝えられないでいた。すれ違う二人をよそに、あるひったくり事件が発生。臣は捜査をすることで慈英から逃げていた。煮え切らない関係に苦悶する慈英は、従兄弟の照英からの助言を受けてある決意をする…
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 CD化のために原作者である崎谷はるひ大先生自ら脚本書き下ろし!

 「さらさら。」は元々、同人誌の発行だったものが、商業誌「しなやかな熱情」に収録されることになった話です。シリーズがCD化することになり、ファンからの熱烈な要望によって、本作のCD化が実現。しかし原作ままだと、CD化するにはボリュームが足りない。そこでなんと、原作者の崎谷はるひ先生自ら脚本を書き下ろす、というなんとも贅沢なスペシャル特待が!ファンの要望でCD化が叶ったうえに、その脚本を原作者が自ら書き下ろす、これは特待のなかの特待。崎谷はるひ先生やAtisさんの、本気でいいものを作るぜ!というプロの姿勢が伝わってきます。聞く方も本気で聞かないと失礼だなと思わせてくれます。
 崎谷先生の書き下ろされた脚本は、発売日順に聞いても、本作を2番目に聞いても、CD読者と原作読者とも違和感がないよう構成してくれています。ただし4作目から振り返るかたちで話が構成されているため、CD読者が本作を2番目に聞くと若干の違和感が生じるかもしれません。それでも筆者は本作を2番目に聞くことを強く推奨します。ここから繋がっていく話は、二人が出会った1作目と、こじらせながらも結ばれた2作目が土台になっていくからです。

 スタートからつまずくこじらせカップル
 慈英は意を決して臣のいる長野に引っ越してくるわけですが、のっけからこじらせてます。これはもう臣の聞き方も悪かったと思うのですが、悲惨な過去を思うと仕方ないっちゃ仕方ないよなと思うしかないような。招かれた慈英の家で「なんで引っ越してきちゃったの」と聞くわけです。この「きちゃった」ね?いや「来ちゃった♡」の方じゃないからね?臣の臆病さが滲む台詞。もう読者としては「うわーまたなんでそういう言い方しちゃうのさ」という心境。それに対してまた慈英が「このへんは環境もいいですし」って言っちゃったよ。(ですしお寿司じゃねぇよ!)それこそ「来ちゃった♡」でええやないか!でもね、慈英も慈英で、ある一面で抜け落ちている部分がことを承知で、怖がられたらどうしようという不安がある。仕方ないっちゃ仕方ない…。もう臣さんは「来ちゃった♡」を待ってたわけだから、あーそうですかそうくるならこうするよ!という具合に「呼び出してくれたらまた相手する」と反撃。(ってこれじゃ引っ越す前と変わらないじゃない責任者呼びなさいよ!)延長戦に突入してしまいます。

 慈英さん、それ立派なストーカーです
 東京での滞在先にした照英の家で、進展しない臣との関係について話すと、「相手意思確認もなしに押しかけりゃ立派なストーカー」と冗談めかして言われる慈英。確かに相手になんの確認もせずに引っ越ししてくる行動、場合によってはちょっと怖い。慈英の場合だと、相手がどう思おうが離さないという気持ちが内在しているように読み取れます。照英との会話のなかには、その他にも気になる発言がちらほらあるのです。

照英「お前に見込まれたんじゃ逃げ場はねぇだろうしな」
慈英「俺が勢いで行動したらどうなると思ってるんですか」
照英「ま、相手が壊れないことを祈るかな」

 こんな会話を通常運転ですみたいな雰囲気で繰り広げている二人。(いや、正気ですか?)この会話が物語るように、慈英には大多数の人と比べたときに物事を捉える視点が違っている部分があります。例えば臣に対しては異常なまでの執着心をみせたかと思えば、それ以外の人のこととなると残酷なまでに無関心であったりする。筆者が1作目で正気ですか?と感じた慈英の言葉が、「こんなものでよければ切り落としてたべさせてやりたい」。セックスの最中に臣が慈英の指を口腔で愛撫するシーンのモノローグのなかで語られている言葉です。(うん、完全にやべぇ奴!)そのあとに続く言葉がまた恐ろしい。中身は是非本編でその狂気に満ちたモノローグを背筋凍らせながら聞いてほしいのですが、最後の「覚悟していて」は、三木さんの芝居も相まって、ホラーですか?と思うほどです。照英さんがストーカーと形容したのもまた、あながちではないのかもしれません。次回作以降を聞いていくと、慈英という人間の輪郭が徐々に明らかになっていくので、是非そこにも注目してみて下さい。

 圧倒的演技力で魅せる迫真の告白シーンを聞け!
 せっかく臣の家で二人でいるのに、クロッキーブックに描いてばかりいる慈英。そんな慈英にしびれを切らして、また即物的な行為に走ろうとする臣を、慈英は拒む。唯一の繋がりであった身体の関係を拒まれた臣は張り詰めていた糸が切れて「セックスもしてくれない男に用はない。尻に突っ込んでくれりゃ誰でもいい」と言い放つ。それまで強い感情を出すことがなかった慈英だったが、この台詞を聞いてまさかの平手打ち。親父にもぶたれたことないのに状態の臣。そして遂に慈英は言います。「俺だけの人になってほしい」。ちょっとここから皆さん目頭押さえる準備をして聞いてほしいところです。臣はまさか自分の好きな人も自分を好きになってくれると思っていなくて、狼狽ながらも震える声で返す。「おまえしか見てないじゃないか」。ここからは神谷さんの芝居が光ります。叩きつけるように言葉を重ねて、最初に招かれた慈英の家で、越してきた理由を聞いたときの言葉に傷ついたと訴えます。
 そして次が筆者の涙腺崩壊ポイント!

「俺はちゃんと笑ってただろう…?」

 涙腺ブッシャアだよ。臣さんは確かに逃げていたし、慈英に肝心な話をさせないようにしていた。けれど決定的で覆しようのない絶望的な答えを言われたら、この関係が終わる。そんなリスクを冒すのなら身体だけの関係でいい、それはせめて身体だけでも必要としてほしいと願った彼の足掻きだった。慈英が「環境がいいから」と答えたときも、臣は笑うことが精一杯だった。嫌われたくない一心で笑った。不安定で少しの力で壊れてしまう、脆くか細い蜘蛛の糸のような臣の心情が、神谷さんの芝居によって表現されていて、何回聞いても、原作を読んでも、つうと泣いてしまう名シーンです。

 できたてこじらせカップルのほかほか告白大会ナイト
 1作目の濡れ場を聞いた方はおわかりだと思いますが、崎谷先生の書く濡れ場は内容もボリュームもがっつり読ませてくれるのが魅力の一つです。CDでは原作の30%ほどしか再現がありませんが、それでも三木さんと神谷さんの演技力と音響監督の技術力により、聞きごたえのある濡れ場になっています。こじらせにこじらせたお二人がやっとこさ成就したあとの濡れ場は、「甘い」の一言に尽きる!とくかく二人とも好きしか言っていない。全ての言語が好きに変換されるくらいの激甘っぷり。臣は何度も自分のことが好きか確認するし、調子にのった慈英さんは臣さんにお口でしちゃいます。そして飲んじゃいます。そしてヘロヘロになった臣さんが、辛抱たまらんと漏らしたモノローグに悶絶。

「もう、早く、なんかされたい…!」

 この台詞むちゃくちゃなエロを孕んでいると思いませんか?なにをされてもいいという意味にも聞こえるし、どんな風に触られても感じるという意味も含んでいるし、全身性感帯ですって宣言しているようなものですしお寿司。神谷さんの演技力もさることながら、崎谷先生のセンスも光る台詞です。
 本当にやっと、やっと気持ちが通じ合えた二人の濡れ場はエロいこと必須なのですが、こちらはとにかく「よかったね」と泣きながら拍手したい気持ちになります。

 小ネタ
 利き声優ができる方は、当然気づかれたと思います。そう、本作にはメインのお二人以外にある人気声優さんが登場されているのです。キレイ売り(BLCDに出演していない男性声優さんのこと)しているので絡みはない役柄ですが、「嶋木」という臣の後輩刑事役で登場しています。その人は、青の祓魔師の奥村燐役や、僕のヒーローアカデミアの爆豪勝己役でおなじみ、岡本信彦さんです!若かりし岡本さんフレッシュです。脇役なんて言わずに是非、今からでもメインで濡れ場がっつり組んでください!岡本さんの実力がいかんなく発揮されることでしょう。

 末筆
 早い方は本作で長野の風になれた、という人もいるのではないでしょうか。筆者もレビューを書くため、何年かぶりに聞き直したのですが、バカの一つ覚えにみたいに同じところで泣く。発売当時は間接照明をたいて、夜な夜な一人で嗚咽するということをしておりました。
 BLCD化している商業誌で、この作品を越えるほど思い入れのあるものは他にありません。一時期、老後は長野に隠居したいと本気で言いふらしていたほどです。長野のどこかで彼らは生きていると思わせる力が、この作品にはあると思います。それはまず原作の圧倒的な面白さと、BLCDの完成度の高さ。著者の崎谷先生も「BLCDの方を聞いてまた世界が膨らむ」とおっしゃっているくらいですから、CD制作に関わっている全てのスタッフが、妥協を許さない仕事をしてくださっていることが伝わります。さすが、長野に隠居するといわしめるだけのBLCDです。

次回、”じえおみ”に近く黒い影!?崎谷はるひ原作!「ひめやかな殉情」レビューです