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[LGBTQ映画/ドラマ]メソッド レビュー

 先日重い腰を上げてfire tv stickを購入してVODサービスに加入したはいいものの、前のめりになりすぎて3つも同時加入するという阿呆な行動に。生きがいだったDlifeが終わって半年、かなりの飢餓状態だったことに気づかされた。皆様、いかがお過ごしでしょうか。

 今回は少し毛色を変えて実写BL映画を語っていこうと思う!VODサービスに入る後押しをしたのが、まさに今回レビューする実写BLだ。本編鑑賞済みの方向けのネタバレまくりの赤裸々レビューなので、まだ未視聴の方はNetflixで是非、見ていただきたい!

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 作品名:メソッド
 [監 督]パク・ウンジン
 [公開日]2017年 11月 2日
 [本編時間]82分
 [メインキャスト]パク・ソンウン,オ・スンフン,ユン・スンア
 [配 信]Netflix(字幕のみ)
 

 あらすじ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 メソッド演技で知られる俳優、イ・ジェハは今度の舞台で同性愛をテーマにした
作品に出演が決まっていた。相手役は元アイドルグループのヨンウ。彼はオートバイで
事故を起こして以来、芸能界から姿を消していたが、これが復帰作となる。ところが
稽古初日に遅刻してやってきたヨンウは謝罪どころか挨拶もせず、台本すら開こうとし
ない。不真面目なヨンウにしびれを切らしたジェハは全力の演技をぶつける。その演技
にヨンウは涙を流しながら台詞で答える。このことをきっかけにヨンウは作品に真摯に
向き合うようになる。ある稽古で現実と見紛うほど生々しい演技をみせるヨンウ。向け
られた愛の言葉に惑わされていくジェハ。虚構と現実を彷徨う男と男。この言葉は、
感情は、一体”どちら”のものなのか——。
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 ■韓国という国はとにかく人の萌え心を鷲掴みにする……なあ、そうだろ?

 韓流ドラマやK-POPはなぜ我々を魅了してやまないのか。筆者もK-POPに魅了された人間の一人で、韓国の“特殊技術”をこれでもかというほど体感してきた。この国は本当に恐ろしい。時速200キロのドストライクをバンバン出してくる。こっちがあわわしている間に、ほーらもう沼底ですよーつって、ハイ一丁あがり〜!5G並みの速さ。5G使ったことないけど。(え)韓流ドラマやK-POPが大衆の心をわしづかみにできるのは、実は韓国独自の萌えテクノロジーが大きく影響している。

 韓流ドラマにはあまり精通がないので、K-POPの特にボーイズグループにおける韓国の萌えテクノロジーについて少し言及させてもらいたい。まず韓国ではボーイズも化粧をする。ばっちりアイメイクまで。日本のアイドルのボーイズもノーメイクではないものの、それはあくまで男は化粧しないという前提に立ったもので、「化粧」には見えない程度のものが多い。対して韓国ボーイズは、化粧とはっきりわかる化粧をする。くっきりとしたアイラインはもう定番といっていい。で、その化粧は上っ面だけ化けているわけではない。高い歌唱力、バックダンサー並みのダンス、人の心臓と止めるレベルのセックスアピール、猫動画もびっくりのおちゃめなかわいさ、こっちの下心が透けて見えているのかと疑うメンバー同士のイチャつき、とどめの高濃度MV。非の打ち所がねえ……。こんなフル装備で来られたら我々はひとたまりもない。極め付けに、これまた韓国の文化なのだが、彼らはスキンシップとしてボディタッチが多い。ハグは当たり前だし、男性同士で手を繋ぐし、肩に頭を預けたり、とにかく触る触る触る。そこに関係性として先輩(兄)と後輩(弟)は互いに大事にし合う文化だったり練習生時代の関係性などが加わって、Youtubeでお尻かじり虫巡回していると、気づいたときには既に沼底。末恐ろしい国!

 先日もBTSの「Dynamite」MVを見て、久しぶりにお叫び連発。蠱惑なカメラ目線、シビれるダンスのあとに見せるはにかんだ笑顔、メンバー同士のじゃれ合い。頭抱えるしかありませんよ本当。ちなみにBTSではジミンタソ推し。(聞いてねえよ)前述した要素だけでも本当にこっちは過剰摂取気味だが、さらに韓国のアイドルはアーティストとして非常にレベルの高いものを作ってくるにも関わらず、お高くとまらない。泥だらけになるバラエティ番組とかバンバン出る。このバラエティ番組がまたえぐいのなんの!エグいほどの萌を提供してくれたのが、韓国ボーイズたちが必ず通る道、その名も「ペーパーキスゲーム」。字面で伝わりましたか?説明しよう!ペーパーキスゲームとは、あぶらとり紙くらいの小さい紙を、口を使って落とさないように次の人に繋いでいくというものだ!え?冗談も大概にしろ?バカヤロウ実話だよ!いや本当。仕事選んで推し!なんて思うこともしばしば(笑)

 K-POPのことを書くのは久しぶりなので、興奮して長くなってしまった……。ここからはお待たせメソッド。本作との出会いは、見たら最後抜け出せなくなる恐怖の沼底源泉YouTube関連動画だった。しかも最初からメインディッシュのキスシーンをがっつり見てしまい、鼻息を荒くしたのを覚えている。YouTubeでいわゆるおいしいところをほぼ消化してしまったことに、本編を見て気がついた。しかし改めて本編を鑑賞して、これまで見てきた同性愛を扱った実写作品のなかで一番萌えた作品になった。ここにもやはり、韓国の萌えテクノロジーが詰まっていることは、言うまでもない。

 ■メソッドの萌えテクノロジー

 本作においてもいかんなく発揮されている韓国の萌えテクノロジー。どんなテクノロジーが詰まっていたか語っていきたい。

 萌えテクノロジーその1.中年ベテラン俳優×青年アイドル

 (受け攻めの組み合わせは筆者が都合のいいように妄想しているだけで、本編でどちらかの示唆はされていない)

 なにがってまずこの設定に萌える。中年×青年はBLではド定番。筆者も大好物。中年俳優のジェハ役にパク・ソンウンさんを起用しているが、この人がまた絶妙な中年でいい!あんまりイケイケ感のないところがベテランっぽさを演出しているし、逆にイケイケのイケメンだとリアリティが薄れるというか生々しさがなくなるし、相手役のオ・スンフンさんがイケメンなので、ものすごくちょうどいい中年おじさんだった。こういう地味な中年おじさんと美青年が絡み合う図は、なんだか肝に来る。それも偏見からくる不謹慎な興奮なのだろうが、美青年なんだから引く手数多のはずなのに、あえて地味なそれも中年のしかも同性を選ぶというギャップ萌え。そしてその中年おじさんに侵食されていく美青年。設定だけでご飯3杯食える。

 萌えテクノロジーその2.オ・スンフン演じるヨンウの艶

 美青年役に当時まだ若手のオ・スンフンさんを起用。このスンフンちゃんがまた艶がすごいのなんの!先のK-POPじゃないが、セクシーかつかわいいをきっちり押さえているプロの沼らせ屋(沼らせ屋とは、強い魅力で沼に引きずり込んでくる者のこと)。今作った造語である。スンフンちゃん演じるヨンウは、とにかく見つめてキャッツアイボーイ!劇中、ジェハを見つめるシーンが多く散りばめられている。見つめてヨンウは間違いなくかわいいが、そのねっとりとした視線にただならぬ含みを感じ取らざるを得ない……。誘い受けのようにも思えるが、精神的にはジェハを襲っているように感じる。

 突然ですが、ここでヨンウ萌え萌えロックンロールを見ていこう!

 (1)ヒョン呼び
 韓国好きな人はすぐわかると思うが、韓国では年下の男性が親しい年上の男性のことを呼ぶときに「ヒョン=兄さん」と親しみと敬意を込めて呼ぶ文化がある。なんだこの文化、最高かよ。文化そのものがブロマンスってすごくないか。ヨンウも劇中のなかでヒョンを連発。特に家の近くでジェハを待ち伏せしていたときの「ヒョン♡」はかわいさと同時に狂気地味たものも感じて最高がすぎるぜ……。

 (2)覚醒のヨンウ

 稽古の最中も横槍を入れてくるマネージャーに苛立ちを隠せず、舞台から出て行ってしまうヨンウ。ジェハが追いかけて説得し、なんとか稽古に戻ってきたヨンウは、まるで役が本人に憑依したような演技をジェハに見せる。その演技は劇中に出てきたピーター・ブルックの言葉「現実の営みと見紛うほどの演技」そのものだった。このときの最初の台詞にロックオン!

 「ずっと会いたかった♡」
 (ジェハの手を握りながら)

 吐血ぶふぉおっ!

 (3)裸のポスター撮影

 舞台のポスター撮影のシーンは、怒涛の萌えラッシュ!妖艶な表情でジェハの顔に寄るヨンウ様に涎が止まらねえ……。このときヨンウの“演技”に心乱されていたジェハは撮影中も上の空なのだが、そんな中年おじさんにさらなる魔の手が襲いかかる。

 「裸で撮影しましょう」

 いやもうジェハ的には「正気ですか?」だよ。で、上半身裸になって撮影がはじまるのだが、ヨンウの誘惑的な視線が世界遺産級の仕事をしている!ジェハの手に自分の手を重ねて、そこからジェハへ視線を移したりと、攻撃の手を緩めないヨンウ。ジェハはもう泣き出す寸前みたいな顔しかできない。オッケーの声がかかってやっと撮影が終わって解放されると思ったら、大間違い!

 「付き人から逃げたいんです。一緒に帰りましょう♡」
 (ジェハの方に手を置いて)

 吐血ぶふぉおっ!パート2

 (4)魅惑のキスシーン

 魅惑のキスシーンは、ジェハの妻が使っている画材倉庫で起こった。背徳感漂う倉庫で、二人は濃密なキスシーンをみせる。その時間およそ1分35秒間。あまりの濃密さに我を忘れ、時間を忘れてこの95秒だけを繰り返し見るだけの生き物になっていた。ヨンウのキスを焦らすシーンはスンフンちゃんのアドリブというから白目をむく。艶が滴り落ちてくるようなこのキスシーンは、本作最大の見所はここだと断言しよう。

 キスシーンは言わずもがな煮えたぎるような萌えがあるが、もう一つ注目していただきたいのがヨンウの手の動き。ジェハの服をぎゅっと掴む動き、首や背中に回した手の、その指の動き一つ一つが艶かしいったらありゃしない!他の実写BL作品でも、筆者は相手の体に触っているときの手の動きに注目して見る性癖がありやして、ヨンウはトップ3に入るレベルでいい動きをしていた。「でも好きなんです」と言ったときの手は至極でした。目ならぬ手も口ほどにものを言う。

 ■でもでもでもでも総合評価は星2つ!★★☆☆☆

 いやいや一番萌えたって言うてましたやん!そうなんだよ確かに萌えは評価が高かった。だがしかし萌えと作品としての総合評価は別物なんだよ!

 本作はものすごく惜しい作品。具材や調理道具はいいものを使っているのだから、調理方法さえ変えればさらに大きなカタルシスを生む作品になる伸び代があっただけに悔やまれる。

 まずLGBTQを扱う映画としては評価が低いと感じた。本作の主要なあらすじである、役者が演技をするなかで役と本物の感情との境界線がつかなくなって、演技の外でも役と同じ感情をもって同性との恋愛にのめり込んでいく、という部分は面白いアイディアだった。けれど蓋を開けてみたら旧体制的な要素ばかりでゲロゲロ。嫉妬心の強い夫のストーカーのような正妻や、妻とのベッドシーン(途中までではるが)はあるのに対して同性同士のジェハとヨンウのベッドシーンは描写がないこと、ジェハの「ゲイなのか?」という台詞に対して否定で返すBLが今だに抱えるお決まりのホモフォビアがあること、そして結局最後まで差別や偏見を否定したり乗り越えることがないままバッドエンドで終わるという捻りのない結果に。何十年も過去の作品ならまだしも、2017年に作られた同性愛を扱う映画にしては、映画そのものに込められた思考や意識に古臭い価値観を覚えた。

 本作では演技による感情の取り違えや人の感情の脆さを描いているが、同性愛を扱う必要はどこにあったのか、という疑問が浮かぶ。なぜ相手が異性ではいけなかったのか。あえて同性愛を選んだその裏には、演技でなければ同性なんかに恋愛感情など抱かない、同性愛は禁忌という差別的意識が含まれているような気さえしてくる。

 物語の最後は、演技はあくまで演技でしたという終わり方をしているが、そらそうだろうね!というしかない。演技は演技であって本物の感情とは異なることは、引力によって物が落下しますと説明するくらい退屈だ。演技の感情が本物の感情に乗り移って社会や立場に翻弄されていく主人公たちを描く方が、同性愛を選んだ理由も生きてくるのではないだろうか。それだけではない。さらに本作は同性愛への差別や偏見が横行するのをそのままにして、ただただ妻は陰険で嫌な女で、不倫相手のヨンウはジェハの身勝手な行動に振り回されて自滅する不幸な青年で、若い男をつまみ食いしたジェハは都合の悪いスキャンダルを全て演技でしたで終わらせて妻のもとに回帰する。ここで描かれているのは不倫された女は陰険で嫉妬深い、けれど戻ってくる夫を受け入れるいい女キャラクターで、不倫した男は不倫相手をボロカスに捨てる我が儘で身勝手だけど許されるキャラクター。こういった旧体制漂う性別の描き方は、何十億回と踏まれてきた足跡だらけの人物像だ。旧体制を再生産していてはカタルシスが生まれない。身勝手な男の身勝手な行動を描くにとどまっているし、単に同性愛を釣りの道具に使ったという印象を持たれても仕方がない。異性愛を扱うより色物として目を引きやすいからだ。

 説明しない演出で台詞も示唆的であり、見終わったあとに補完したくなるような雰囲気のある作品だったし、せっかくいい役者を使っているのだから、もっと人物と物語にひねりがほしかった。同性愛を扱うなら同性愛を扱う意義を作品のなかできちっと示してほしかったと思う。

 ■私的考察

 本作は台詞に関しても描写に関しても抽象的なところが多く、説明しない作品だった。見た人それぞれに解釈が異なると思うが、作品のなかで答えが明確に出てないものなど補完してみたいと思う。

 1.報告発表会で記者が言及した「キスしている写真」とは?

 報告発表会で記者が「本当にキスしたんですか」と聞くシーンがある。正直なんのことを言っているのかわからなかった。本編を見返してもキスシーンはあっても写真はとっていない。なぜ本編でキスシーンの写真を出さなかったのか不明だが、これはヨンウが報告発表会の舞台裏で言った「愛を伝えたくてマスコミに伝えた」のなかに含まれているものと解釈。マスコミに愛を証明するには自分たちがただのお友達ではない姿を見せる必要があった。そのためにわざわざキスしている写真を送ったのではないだろうか。

 2.ジェハとヨンウは肉体関係があった?

 筆者はあったと解釈した。ジェハは妻のいる異性愛者の設定だから肉体関係のない、気持ちだけで繋がっている関係を築ける人物像ではないと解釈できる。やはりあの倉庫での濃厚なキスシーンは肉体関係を示唆するものだと思う。

 3.ジェハはヨンウを愛していた?

 筆者はどうにもジェハからヨンウへの愛を感じることができなかった。よく見ているとわかるが、ジェハは役の台詞以外でヨンウに好意の言葉を一度も口にしていない。先輩として演技指導することはあっても、ヨンウを労ったり思いやる場面はなかった。ヨンウに愛情があったなら、自分が怪我をさせた場面では自分を責めてなによりヨンウを心配するだろうし、マネージャーにヨンウを連れていかれても棒立ちにならないだろうし、ヨンウに対して貪欲な必死さがあっただろう。これらのことからも、ジェハからみたヨンウへの繋がりは結局「演技」しかなかった。ヨンウを真から愛していたとは言えない。

 4.ヨンウはジェハを愛していた?

 ジェハに対してヨンウは本気だったのだと解釈している。ヨンウはオートバイ事故で芸能界を干されており、言いたい放題のマスコミや思考停止のファン、商品としてマネージャーに管理される自分に孤独を感じていた。そんななかジェハが演技とはいえ自分のことを思って叱り、演技に導いてくれたことがヨンウを揺さぶった。何度も好きだと伝えているし、逃げずにジェハとのことをマスコミに話そうとした姿勢や、自分に気持ちがないとわかってもそれを許して舞台を成功に導いた彼の行動、最後舞台が終わって車内に乗り込んだあとのヨンウの表情からも、演技ではなかったことが示唆されていたと解釈できる。

 5.ヨンウがジェハ宅へ侵入した理由は?

 自分がマスコミにジェハとの写真をリークしたことでジェハが攻撃されるようになってしまった。自分は全てを明らかにする覚悟ができていたが、ジェハは全て演技だったと答えた。しかし今のジェハと自分の精神状態では、舞台が失敗に終わる可能性が大いにあった。ヨンウはせめて舞台だけは成功させなくてはならないと考えた。同時に演技のなかだけは、二人だけの世界になれるとも。ジェハにヒウォンを脅かしたと思わせることで、アンチェインの状況と酷似した状況を作り出し、ジェハ演じるマークに臨場感のある演技をさせた。ピーター・ブルックの言葉「現実の営みと見紛うほどの演技」のとおりに。補助ワイヤーを使わなかったのも臨場感を得るためだったが、それだけではなく演技という二人だけの時間を閉じ込められるならそれでいいとも考えていた。生々しいほどの演技を引き出すことで舞台は成功し、ジェハの名誉も戻る。自分だけがジェハを失うことになっても彼を救おうとした、ヨンウなりの愛情だったと解釈した。

 6.人差し指の模型は何を示唆していた?

 本編に頻繁に出てくる人差し指の模型がある。道具の本来の意味は劇で使用する小道具で、切り落としたマークの指をシンガーが愛する者の体の一部として持っているというものだ。ヨンウは演技のなかで「これはもらっていく、僕のだから」と言っている。単純に指はジェハの感情ないしは愛情で、最後楽屋に落ちていた指の意味はヨンウからジェハへ本物でないなら返すという意味のメタファーなのではないか。指は模型であって本物ではない=ジェハの愛情も本物ではなかった。本物ではないと認めたからこそジェハは指の模型を拾わなかったことになる。

 ■末筆

 韓国の同性愛映画ははじめて見たのだが、あれだけ萌えテクノロジーが発展している国だと知っているのならなぜもっと早く見ておかなかったのかと後悔した。演技と感情を軸に男と男が演技以外のところで惹かれ合うその愛は本物か、というテーマはすごく興味深かったし、役者もいい仕事をしていただけに惜しい作品だった。

 いかんせん本編の時間が短いので、BL主食ライターの筆者としては、栄養(メインカップルのラブラブなシーン)不足で飢餓状態。つかの間の仲だとしても少なすぎる!82分じゃどう考えても時間足りてないから倍はいる!ヨンウがギターで歌ってるシーンなんか、あんた歌なんか歌ってないで早くやることやりなさいよ!などと外道なヤジを飛ばしす始末。(最低だな)あれだけ濃厚なキスシーンがあるのだから、ジェハとヨンウのベッドシーンがないのは逆に不自然じゃない?と言いながら補完するために妄想し、また映画を繰り返し見てしまう、でもやっばり足りなくて妄想するというループにハマってしまうのよねぇ。そういう意味では上手いやり口なのかもしれない。

 物語は別にしてなぜここまで突き動かされるものがあったのかと考えれば、主たる設定と役者の力が大きく作用していたように思う。特にヨンウのシーンは本当に艶があって、今まで見た実写BLのどの受け役の子より萌えた!ヨンウ役がスンフンちゃんだったから見れた作品だったといってもいいかもしれない。それくらいオ・スンフンさんの演技は素晴らしいものがあった。名付けてヨンウ沼にようこそ映画。

 筆者は気に入ったBLにテーマ曲をつけるのが好きなのだが、今回は椎名林檎さんの『依存症』を選んだ。陰鬱でサスペンスを想起させる曲の雰囲気がと歌詞の特に「あなたの相槌だけ望んでいるあたしは病気」のところが劇中ヨンウの感情に重なるものを感じた。他の歌詞のなかでもヨンウの孤独が歌われているように思えて、エンドレスリピートでこの記事を書いた。

 最後にメソッド警備隊の捜索により、いくつかのオフショットを発見。クランクアップの映像ではパク・ソンウンさんがオ・スンフンさんを抱き寄せるシーンが(吐血)。またキスシーンOKのあと照れながら素顔に戻るオ・スンフンさん(吐血)。これ全部DVDにしてオフショット全部特典映像として載せてくれないか……。18万くらいなら出すから!

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 この作品はむちゃくちゃ萌えて同じくらい批判はしたが、なんだかんだと言いつつ結局好きな作品に着地する不思議な映画だった。というか↑こんなの見せられたら好きっていうしかないだろ……。

 ご完読ありがとうございました!